山口岩男/IWAO Yamaguchi OFFICIAL WEB

Cardinal

cardinal_jacket

2004.7.7
GEMMATIKA RECORDS
RSCG-1026[CD 12cm]
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01 Afterglow
02 Shoreline Drive
03 Pu'anahulu
04 Royal Hawaiian Hotel
05 Carolina
06 The Gentle Rain
07 Avenida
08 Summer Samba
09 Silent Lagoon
10 Sentimental Journey
11 The Sea Of Tears

ライナーノーツ

初めてホノルルを訪れたとき、ホテルのテラスで見た頭の赤い可愛らしい小鳥。 まだハワイの事を何も知らなかった僕は、美しい果物や植物に出会うたびに驚いていたが、鳥までパラダイスしているんだ!と、感動した。 それからホノルルに行き、この美しい鳥を見かけるたびに、カメラに収めていた。 そんなに鳥に興味があったわけではないので、特に名前を調べることもなかった。
“Sunday Graffiti” =毎週日曜日に更新している日記のコーナーのタイトル・イメージ写真で、僕がハナウマ・ベイで撮った、 その赤い鳥の写真を使っていたことがあり、その日記で「なんて言う鳥なんだろう?」と書いたところ、読者の方々からメールを頂き、 それが” Brazilian Cardinal”という鳥であることが分かった。 和名、コウカンチョウ。英語では、別名Red Crested Cardinal。1930年代に、ブラジルから持ち込まれたという。
僕は思わずニヤリとしてしまった。前作「Natureza」から、僕がホームスタジオで作成したベーシックトラックをブラジル/リオデジャネイロに送り、 パーカッション等をダビングして送り返してもらい、東京で完成させるという実験的な作業を何曲かやっている。
ハワイ・ブラジル。二つのパラダイス。共に、豊かな音楽の泉を持ち、特にハワイでは60年代に「フラノバ」と呼ばれるブラジリアンテイストを 取り入れたハワイ音楽の盛り上がりがあったとされる。僕もそんなに詳しくはないけれどもブラジル音楽、とりわけボサノヴァは大好きで、 ウクレレでもよく弾いていた。ブラジルからハワイに渡った、頭の赤い鳥、”Brazilian Cardinal”。まさに、象徴的ではないか!
僕の楽器を作ってもらっている志茂崇弘さんとそんな話をしているうちに、前からお願いしていた新作の5弦ウクレレの名前は”Cardinal”、 そしてウクレレのヘッドには”Brazilian Cardinal”のインレイを入れてもらうことに決まった。
そしてその楽器をフィーチャーした今回のアルバムのタイトルは、ごく自然な流れで「Cardinal」となったのである。
最小限の楽器編成。たっぷり与えられた音空間の中を、ウクレレが気持ちよく泳いでいる。そんなイメージで、 今回は打ち込みやサンプリングを全く使わず、生楽器だけ。クリック(テンポをキープするためのメトロノーム音。 演奏者が録音時にヘッドフォンでモニターする)もほとんど使わず、演奏者達の自然なグルーブで気持ちよく揺れるテンポ。 気が付いてみるとそんなオーガニックなアルバムに仕上がっていた。100%天日干し。「Cardinal」、どうぞお楽しみ下さい!
山口岩男 2004年6月

1. Afterglow
music: 山口岩男/arranged: 山口岩男
山口岩男: Ukulele & Acoustic Guitars
HAWAII的なアプローチで作られた夕暮れのSLOW MUSIC。2本のAcoustic Guitarの間で Ukuleleが歌います。
僕のアルバムは、ギターとウクレレのデュオで始まるのが多い。 "Ukuleleman"では山内雄基さんとのデュオ、"Paradise"ではソニー・リム、"Postcardsummer"では吉川忠英さん。そして今回は自分で弾いたC-Wahineのスラッキーギター&レギュラーチューニングの2本をバックにウクレレを弾いた。 アルバムも6枚目ともなると、ほとんどゼロからのスタートなのだが、この曲は昨年11月頃に出来ていた。大して弾けないのだが、 スラッキーギターは好きでよく弾いている。一番好きなチューニングがこのC-Wahineである。ギターはコリングスのOM-1、ウクレレはもちろんカーディナル!

2. Shoreline Drive
music: 山口岩男/arranged: 山口岩男
山口岩男: Ukulele & Acoustic Guitars/Masao Seki:Fretless Bass/Masakazu Tangiku:Mond Drums
軽快なORIGINAL HAWAIIAN ACOUSTIC ROCK TUNE。NORTH SHOREのDRIVE WAYをOPENにしてCRUSSINGしているってかんじ。丹菊のMond DrumsはちょっとDOWN TO EARTHな響きです。
僕のウクレレスタイルは年々変化して来ている。"Ukuleleman", "Paradise"までは、主にソプラノウクレレを使い右手は親指を使ってメロディーを弾くいわゆる「オータさんスタイル」"Happyday"ではウクレレはソプラノだけれども、人差し指も多く使うハワイの最近のプレイスタイル、そして"Postcardsummer"からはテナーウクレレ。"Natureza"の数曲でサムピックを使い(Hilo Shower,On and on.Pandanusu)、遂に今回は全曲サムピックを使い、人差し指を中心に弾くスタイル。気がついたらHerb Ohta.Jr.に近いスタイルになっていた。このスタイルは、スラッキーギターのフレーズを取り入れやすく。最も今のハワイの音楽を感じさせる事が出来るウクレレスタイルだと僕は思っている。この曲はそんなフレーズをたっぷりつめ込んでやろうという気持ちで書いた。おいしいフレーズが満載なので、ぜひコピーしてみてください。

3. Pu'uanahulu
music: David Alpa'i/arranged: 山口岩男
山口岩男: Baritone Ukulele
今回はこの曲だけ、Baritone Ukuleleを演奏しています。 SOLO。
ハワイのアーティストのアルバムは(特に最近のアーティスト)、トラッドとオリジナルが半々という感じのものが多い。もともとハワイ音楽には疎かった僕であるが、普段から何気なくハワイものを聴いていると、よくカヴァーされる曲はタイトルも知らないまま、(無意識のうちに)口ずさんでいたり、ウクレレで弾いていたりする。この曲も、実に多くのアーティストが取り上げており、ハワイ音楽愛好家にはよく知られた曲だ。同じメロディーが4度上に転調し、また戻って…を繰り返す、ちょっと変わった曲。僕が初めて聴いたのがハワイ島のスラッキー・ギタリスト、ジョン・キアヴェのヴァージョン。彼とは、僕が本格的にウクレレに取り組むきっかけとなった1998年ハワイ島・コハラでの、スラッキー&ウクレレフェスティバルでお会いした。そんなこともあり、この曲を演奏する時、僕の中にはいつもコハラの抜けるような青い空と海が浮かぶ。ステージではよく演奏していたので、レコーディングは一発O.K! ウクレレファンのみなさん、今年こそはバリトンウクレレを始めてみたら?気持ちいいよー!ちなみに、チューニングを半音下げて、SLACKしてます。

4. Royal Hawaiian Hotel
music: John Noble, Mary Robins/arranged: 山口岩男
山口岩男: Ukulele/YANAGIMAN:Wood Bass
元々はそのTITLEの様にHONOLULUの有名なRoyal Hawaiian HotelのCMとして作られた軽快なTUNEです。
なんかべたべたな選曲ですが、ウクレレとウッドベースのデュオという、実にラウンジっぽい編成でトラッドな曲をやってみたかった。ウッドベースとデュオというのは、オータさんもジュニアもよくやるんだが、なんともまったりした空間が生まれる。トラッドをウクレレのインストゥメンタルでやる場合、ワンコーラスが短く、メロディーもシンプルなので、転調したり、メロディーを元に新しくフレーズを作ったりということが行われる。僕も先人たちの例に従って、「転調&おいしいフレーズ攻撃」でアレンジしてみた。どうでしょう?

5. Carolina
music: Chico Buarque/arranged: 山口岩男 & Mario Adnet
山口岩男: Ukulele/Mario Adnet: Nylon String Guitar/Marcos Suzano:pandeiro/Kazuo Yoshida:Percussion
'67年、3rd festival of brazilian pop music at San Pauloでナラ・レオンが歌って第2位をとったChico BuarqueのメロディアスなSAMBA CANSON。余りCOVERされていないが、隠れた名曲です。吉田による選曲で、RIOでBASSIC TRUCKを録音。Marcos Suzanoの独特なNylon String Guitarの刻みはさすがBRAZILIANならでは。
吉田和雄さんに選んでもらったナンバー。僕はボサノヴァが大好きであるが、そんなに詳しい訳ではないから、自分で選ぶと、どうしても有名曲になってしまう。そんな訳で、渋いところで、ウクレレに合いそうなものを…ということで選んでもらった。とてもきれいなメロディー、コード進行。僕がクリックと仮のウクレレ、仮のギターを入れたPro Toolsデータを吉田さんにブラジルに持って行ってもらい、現地のミュージシャンに音を入れてもらった。今回、始めてブラジル人ミュージシャンにギターを弾いてもらったんだけど、ぶっ飛んだよ!コードの付け方といい、タイミングといい、まさにブラジル!僕なりに考えたコードをメロ譜に付けておいたのだが、全く無視!なるほど、こう来るか…と感動しましたよ。ギタリストや、ピアニストは、メロディーや歌に『好きなようにコード付けて!』と言われて、どんなコードで(もちろん、瞬時に!)弾くか、というところにセンスが出るよね!僕のレッスンではウクレレでそんなこともたまにやるんだ。リハーモナイズって言うんだけどね。僕はバークレー音楽大学出身の柳さんにその辺の事をずいぶん教わった。アレンジしていて分からない事や、迷う事があるといつも柳さんに電話する。友達にして、師匠。ありがたいことです。

6. The Gentle Rain
music: Luiz Bonfa/arranged: 山口岩男 & Kazuo Yoshida
山口岩男: Ukulele/Kazuo Yoshida:Drums/Taroma Koshida:Nylon String Guitar/Hiroshi Isogawa:Fretless Bass
Astrud Gilbertoの歌唱で知られるLuiz BonfaのBOSSA NOVA。これも余り取りあげられていない名曲。はじめて、吉田のRHYTHM SECTIONとTOKYOで録音した。
「黒いオルフェ」で有名なギタリスト、ルイス・ボンファの作品。とても好きなアーティストで、彼の作品を取り上げるのは「Postcard Summer」の「Rio De Janeiro」に続き2度目である。部屋を片付けていて、何年も前に途中まで採譜してそのままになっていた譜面を見つけ、吉田さんのバンドでセッションしてみようと言う事になった。僕がウクレレのアルバムでマイナー調の曲を取り上げるのは初めてかも?。ちょっと確認…。「Postcard Summer」の「Wind Of The Night」があった。ただ、出だしが4度メジャーセブンから始まるので、あまりマイナーという感じはしないかも。シンガーソングライター時代も、マイナー調の曲は数えるほどだ。再び確認…全部で8曲。マイナーの曲が嫌いな訳では決してないのに、我ながら不思議である。そして、一番知られている曲が火曜サスペンス劇場主題歌の「あなたの海になりたい」というのも面白い。脱線してしまいました、失礼!

7. Avenida
music:山口岩男/arranged:山口岩男 & Kazuo Yoshida
山口岩男: Ukulele/Pirulito:Percussion/Jose Luiz Maia:Electric Bass /Paulo Cesar Gomes:Keyboard
RIO REC 山口岩男 ORIGINAL SAMBA第2弾。RHYTHMはIjexa。AvenidaはAvenueの意味です。BRAZILから帰国したPauloは直行でPARADISE STUDIOへ。KeyboardをDUBBINGしてくれた。関西テレビ「2時ワクッ!」月~金ベルト、午後2時05分~3時00分のエンディング・テーマ。
前作「Natureza」の「Zinga」の続編とも言えるオリジナルサンバ・チューン。あまり深く考えず、指のおもむくまま?に書いたナンバー。曲を書くときは、おおまかに分けて「頭で考える」「ハートで考える」「指(体)で考える」という、3パターンあるような気がする。こういうタイプの曲を書く作業はスポーツに近い。とにかく指にまかせて、頭でなるべく考えないようにして…。当初、キーボードを入れる予定は無かったのだが、ちょっと寂しかったので、急遽「明日スタジオに来てくれるブラジル人キーボーディストいない?」とむちゃくちゃなお願いをしたら、いたんですね、Paulo Cesar Gomesという人が。よく話がわからなかったのだけれども、現在は日本在住で、世界中で仕事をしており、レコーディング当日はアトランタから成田に着いて、家に寄って楽器を積んで駆けつけてくれたみたいな事を言っていた。ブラジル人ピアニストの演奏を間近で聴くのは始めてであったが、やっぱりノリが独特。エンジニアの加藤さんは「グルーヴが、ロナウドのドリブルにも通じるものがありますね」と言っていたが、まさしくそんな感じ。僕はレッスンでも「人種の違いと、ビートの違い」みたいな話をよくするのだが、また一つ僕の体に新しいグルーヴが入った感じ。この曲は、ライヴで演奏するのが本当に楽しみだなぁ!

8. Summer Samba
music: Marcos Valle, Paulo Valle/arranged: 山口岩男 & Kazuo Yoshida
山口岩男: Ukulele/Kazuo Yoshida:Drums & Ganza'/Taroma Koshida:Nylon String Guitar/Hiroshi Isogawa:Fretless Bass
BOSSA NOVAのHIT曲。これも吉田のRHYTHM SECTIONとTOKYOで録音した。BRAZILにも負けない、いい感じに仕上がりました。
さほどブラジル音楽に関心が無い人でも、きっと一度は耳にした事があるんじゃないかな?「So Nice」というタイトルで呼ばれる事もあるこのナンバー、以前からライヴで演奏したり、レッスンでも取り上げたり、とにかく好きな曲なのだ。シンプルなメロディーなのだが、コード進行がちょっと変わっていて面白い。レコーディングするにあたって、オリジナルのVampを付けてみた。17フレットのD音まで使ったフレーズ。この辺のフレットになると指が収まらず、音を出すのが大変!ちなみにCardinalは22フレットまであります。

9. Silent Lagoon
music:山口岩男/arranged:山口岩男
山口岩男: Ukulele & Electric Guitar/Masao Seki:Fretless Bass/Masakazu Tangiku:Mond Drums, Gong Bass, Shaker, Spring Drum
CLASSICALなアプローチで作られたORIGINAL。奥行きの深さを感じさせる作品になりました。EFFECT的なPERCUSSIONは丹菊。山口岩男もここではElectric Guitarも使用している。
バロック的というか、僕にしては珍しく、アドリブの要素が全くない、構築系の曲である。これはもう、Cardinalが運んで来てくれた曲、としか言いようが無い。最近書いた曲の中では、一番のお気に入り。KeyはAだが、メロディーの途中で一瞬、短三度転調してCになり、すぐAに戻る。これも意識的に行った訳ではなく、メロディーの流れで自然にそうなった。最初のところで聴こえてくる風のような音は、パーカッションの丹ちゃんによる、メガホンにスプリングを付けたような謎の楽器?である。彼の膨大な楽器コレクションの中にはとんでもないものがたくさんある。エレキギターはセイモア・ダンカンのストラトキャスター。以前、ケミストリーのレコーディングの際に購入したものだが、使ったのはそれ以来だ。ウクレレのアルバムでエレキギターを弾いたのは初めてである。DVD「かなり本気でウクレレ!」にウクレレソロの楽譜(タブ譜付き)が載ってるので、ぜひ弾いてみて下さい!

10. Sentimental Journey
music: Bud Green, Les Brown, Benjamin Homer/arranged: 山口岩男
山口岩男: Ukulele/YANAGIMAN:Wood Bass
YANAGIMANとSWINGGYにSESSIONしました。
超定番のスタンダードジャズ。以前ライブでギタリスト・田中義人とのデュオで一度だけ演奏した事がある。イントロのフレーズはシカゴブルース的アプローチで、以前「Root 66」を演奏する際に使っていたフレーズ。僕はコテコテのブルースよりも、ちょっとJazzyなコードを使った、軽めのブルースが好きだ。オータさんのステージを初めて観たとき、時折ブルースっぽいフレーズがウクレレから飛び出すのに驚き「かっこいい!」と思った。オールドマーティンのゴージャスかつ甘い音色で弾かれるブルースフレーズには、心底参ってしまったものだ。古い世代のミュージシャンたちは、みんな自分のブルーススタイルを持っているような気がする。僕もウクレレで渋くブルースを決められるオッサンになりたいなぁ…。結構イイ線行ってるでしょ!?

11. The Sea of Tears
music: 山口岩男/arranged: 山口岩男
山口岩男: Ukulele
締めは山口岩男のORIGINAL SOLO TUNE。表情豊かな心に残る曲です。
ウクレレソロの曲は、ポロポロ弾いていて出来る事がほとんどだ。「Kona Sunset」もそうだったが、感情が思考回路を通らずに、そのまま指先に流れて行き、それがメロディーとなって楽器から出てくる感じ。2、3回繰り返して弾いただけでおおまかな形ができてしまい、細かいところをちょっと考えて、それでも30分くらいで出来てしまった。最初からソロで弾こうと思っていたので、レコーディングも譜面は無し。その場の思いつきで、チューニングを半音下げた。もし採譜しようとすると、Keyはシャープだらけの「B」になってしまうので、もしスコアを発表する際には、作った時の「C」にしたいと思ってます。タイトルの「The Sea Of Tears」涙の成分は、分析すると驚くほど海水に似ているという話をどこかで読んだ事あって…。海を見て泣きたくなることがあったら、それは自然な事なのかもしれません。僕もたまーに、お気に入りのギターとウクレレを何本か車に積んで、海に出かける事があります。海を見ながら、ポロポロと楽器を弾いて半日ほど過ごす。すっかりリフレッシュされます。そして、男は、こういう時は一人じゃなきゃいけないのです。自分と話をしに行くんだね。泣きに行くんじゃないぞ!(涙)。